
1 子ども利益のために
私が親子の再生事案に強い意識を持って関わることになった最大の理由は、子どもの利益のためです。別居後、離婚後何年かしてから、子どもの精神への影響は強く出てきてしまうようです。中学、高校時代から過食、拒食を繰り返したり、リストカットをしてしまったりして、極端な引きこもりになり、精神科の入院、退院を繰り返すようになって、成人になった子どもたちを偶々同時期に何人か見たり、学校関係者の方々からお話を聞く時期がありました。
そのうちの一人は、父親側の代理人となり母親の関与のない面会交流を実現したところ、お子さんがどんどん安定していって、友達との交流が復活したり、学業に戻ったりして、現在は社会人として活躍されるようになりました。
家族のきずなは、子どもが健全に成長するにあたって必要なことだということを実感しました。その後、色々な研究論文を読んでいくと、私の実感は科学的にも認められていることがわかりました。法律の世界でも、子どもの利益のために親が努力をするべきだということが真理であると定められているのですが、実際の実務では必ずしも子どもの利益の優先という課題が徹底されていません。このため、親子再生について私が取り組まなければならないと考えるようになりました。
ともすれば、子どもの取り合いが両親の感情を高めてしまうことが多いのは致し方ありません。しかし、感情のままに主張をしあうことをしてしまうと、裁判所からはどっちもどっちだという決めつけがされてしまいます。子どもの利益を最優先にすることによって、客観的な主張が可能になり、裁判所を動かすことができるようになります。
国や地方自治体等公的な機関は、子どもの利益を最優先しない政策や家族の分断につながるような政策を行っているように感じられます。子どもの利益を科学的に把握して主張していくことが求められていると強く感じています。
2 不合理な別居親に対する扱い
子どもを連れ去って別居する場合は、特に母親側の場合は夫のDVを理由として主張することが多いです。しかし、その多くの事案で実際にはDVが存在しないことが証拠上明らかになっています。それにもかかわらず、行政や警察の相談では、相談を受けてDV相談になった場合は、相談をしただけで妻を「被害者」と呼び、その夫は「加害者」と呼称されます。行政や司法でも加害者とされた夫は、不合理な不利益を受けます。
法律家として、このような行政や司法の不合理な扱いは是正されなければならないと強く感じています。
また、このような行政など支援は、妻側の心理的状態を悪いままに固定することもあります。公平に、客観的真実に基づいて、関係調整をすることで、両親と子ども、関係者一同が幸せに向かうようになるということが私の結論です。
3 心理学、精神医学、記憶の学習に基づいた関係調整の視点 争いをしない解決
夫婦の間でも、実際の出来事を超えて、自分が攻撃されているように感じたり、相手の行動を恐怖に感じたりすることが多くあります。人間の「恐怖、嫌悪、憎悪、不安」の感情は、必ずしも客観的事実を反映したものではありません。つまり、夫婦関係をこじらせる一番多い原因が、誤解と思い込みだと私は感じることが多くあります。
思い込みを抱かせやすいのは、意外なことに身体疾患です。専門医の説明を受けたり、文献を紹介してもらったりして、理由なく不安を抱かせる疾患や傷害を学習して、思い込みDVなのではないかという視点を持つと、むしろお互いの主張がよく理解できるようになります。
しかし、当事者であり、かつ夫婦という継続的関係にいる者同士は、なかなか自分が攻撃された事実が、誤解や思い込みによるものだということを理解できません。当然だと思います。私ですらそうですから。ただ、このような視点を持つと、無駄に感情を高める必要が無く、冷静に事態をコントロールすることができるようになります。それが理解できないと、こちら側の合理的な対応、正義感情によって相手を余計に感情的にさせてしまう誤りをしがちです。
「思い込みDV」という視点は、相手を攻撃するための視点ではなく、合理的な解決の方法論を見つける視点です。
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