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保護命令を申し立てられた時

1 保護命令という制度

保護命令という制度は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV法)という法律に定められています。
「配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫」があり、
「その生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きいとき」に発動されます。
保護命令の内容としては
接近禁止命令、自宅からの退去命令、子どもへの接近禁止命令があります。
この命令に違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。

2 保護命令の落とし穴

保護命令の申し立てを受けた方は、通常、このような命令が認められるわけがないと高を括ってしまいます。保護命令の申し立てを受けた方は、申立書にかかれていることは、身に覚えのないことやあまりにも大げさな内容と受け止めてしまいます。公正な裁判所で、このような申し立てが認められるはずがないと思ってしまうことが一般的だからです。

  このため「話せばわかる」という意識を持ってしまい、弁護士も頼まずに一人で裁判所に出かけてしまいます。通常の裁判と一緒ですから、争い方が正確でないために保護命令が出てしまうこともあり、これが案外多いです。

  通知が来てから裁判までの日数が無いことも多く、弁護士を頼まないで裁判所に行く一つの理由となっています。


3 先ずすることは弁護士探すこと

私は、もし自分が保護命令の相手方になったならば、自分以外の弁護士に代理人になってもらうでしょう。保護命令申立書と証拠を客観的に判断してもらい、相手方の立証が成功しているかという判断が第一です。

  第二は、裁判官対策として、簡単な証明ではなく訴訟上の証明になっているかを冷静に判断し、裁判所にくぎを刺すということを忘れてはなりません。

  第三に、これ等の事情から、本当に生命、身体に重大な危害を受ける恐れが大きいと言えるのかを堂々と主張してもらうということです。

  弁護士がいるかいないで、実際に裁判官の決断が大きく変わる場合があります。私が経験した事件では、およそ法律上の要件を欠くような事案で、保護命令が出てしまった事件がありました。6か月後の更新の申し立てをした時に私が代理人として、上記1,2,3の主張をしたところ、最初に命令を出した裁判官は、申立人に更新の申し立てを取り下げるように説得をして、実際に取り下げがなされました。弁護士が付いているかいないかの違いしかなかったわけで、大変恐ろしい思いをしました。



4 どんな弁護士を探せばよいか

 先ず、裁判の日に対応してくれる弁護士を探すことが一番のハードルです。これがなかなか難しいのは、呼び出し状がギリギリになってから届くからです。

 次に、保護命令という制度を知っている弁護士である必要があります。制度自体はそれほど難しくないので、弁護士ならすぐに習得できます。しかし、実際の運用が申立人に有利に扱われているということを知っている必要があります。

  そして、バイアスのない弁護士です。「DV」という言葉だけで、そう言われた相手が暴力をする人かもしれないという先入観を持ってしまうということが多いということが、残念ながら現実です。このバイアスを持たない人であることは絶対条件であると思います。

5 保護命令が通ってしまうことの不利益


  第1に、自分がDV夫、モラハラ夫だと裁判所で認定されたということで大きな精神的ダメージを受けてしまいます。

  第2に、離婚調停や裁判で、保護命令が通っているという場合は、離婚が認められやすくなり、慰謝料も増額される傾向はあると思います。

  第3に、子どもとの面会交流が実現しずらくなります。特に地方の支部事件の場合は、保護命令を出して、接近禁止を出した裁判官が、面会交流調停の審判官になることがあります。この場合は、面会交流を申し立てたこと自体に敵意を示されたことがあります。要するに、あなたの判断は間違っていたので面会交流を申し立てるということを言っているようなものだからです。

  また、話し合いになったとしても、手紙での交流に誘導されやすくなります。

  初期対応を間違えると、被害は甚大なのです。

  なお、同時に警察に訴えられていて刑事事件化するときには、やはり保護命令が却下されることでかなり有利に進むということも実感としてあります。

 

  通知が来てから裁判までの日数が無いことも多く、弁護士を頼まないで裁判所に行く一つの理由となっています。


6 保護命令の弁護士費用の目安

地域によってばらつきはあるようです。私の場合は33万円の着手金で、保護命令を排斥した場合は同額の報酬をいただくということが標準的です。つまり保護命令が却下された場合は、総額66万円かかりますということです。事情によっては分割でのお支払いでもよいですという場合もあります。また、その後離婚調停や、婚姻費用分担調停、面会交流調停と事件数が多くなるのが家庭裁判所の事件の特徴です。このような場合は、全体のバランスで着手金の総額を決めます。書面で見積書を出しますので、受取ってご検討ください。

  費用は、弁護士によってずいぶん違うようです。見積もりを複数の弁護士から取って、その他の事情と合わせてご検討することをお勧めします。